「HTML」という言葉についてはご存知の方も多いと考えるが、Hyper Text Markup Languageの略で普段、皆さんがWebブラウザを使用してインターネット/イントラネット上のサイトを閲覧した際のページ画面の記述に用いられている言語である。
HTMLの言語・文法に従って記述されたサーバー上のファイルをWebブラウザが読み込むと、その記述に従った文字列や写真等がWebブラウザ上に表示される。
HTML5は、HTMLの第5版として、これまでのHTMLを更に機能拡張したもので、これまでの版では表現しきれなかった文章の論理構造とユーザーインターフェースを定義し、更にアプリケーションを作成するためのAPI(Application Program Interface)を拡張したものである。

HTML5は (1)マークアップ言語(HTML5のコア)、(2)CSS3(Cascading Style Sheets Level3)、(3)Java Script用APIの3つの側面から成り立っており、HTML4と比較すると(1)においては文章構造を追加表現する記述子が増やされ、またaudioタグ、videoタグ等にてaudio/videoデータを直接扱うことが可能となった。(2)では色の指定やアニメーション、2D/3D変換などWebブラウザにおけるコンテンツの視覚的表現機能が強化され、(3)ではブラウザ間での通信機能や、3次元グラフィックスの表示、Webサーバーとブラウザ間の双方向通信を可能とする等のAPIが追加され、アプリケーションの開発が容易になった。
これらにより、これまでのHTML/Webブラウザだけでは動作限界のあったサービスやアプリケーション機能をHTML5対応のWebブラウザ上だけで実現させることが可能となり、これまでコンピュータ上の1ソフトウェアであったWebブラウザがオペレーティングシステム(OS)として機能する可能性も出てきた。

放送サービスにおけるHTML5の利用
HTML5はこれまでのインターネットサービスだけではなく、放送サービスでも利用され始めている。
日本国内においてはNHKのHybridcast(ハイブリッドキャスト)サービスにおいて、HTML5で記述されたアプリケーションデータを放送波もしくはインターネット経由でHybridcastサービス対応の受信機やスマホ/タブレット等の端末で受けることにより、放送と通信を融合したサービス(例えば、マラソン中継の放送映像の上にインターネット経由で取得した関連情報や映像を重ねて映す、TV画面と同期して選手の詳細プロフィールを宅内のタブレット上に表示させる等)の提供が可能となる。

海外においては、10月号で紹介したDLNA CVP-2(2014年9月にVidipathと命名)においても、HTML5の技術が採用されており、HTML5対応ブラウザを搭載したSTBや他の端末に対してHTML5で記述されたメニューページを宅外のサーバー等から提供することで、STB等にメニュー画面を作り込んでおくことなしに、ビジュアルかつユーザフレンドリーなインターフェースを持つメニュー画面を提供することが可能となる。

これまでHTML/Web技術というと、一般的には通信サービスにおける情報発信やコミュニケーションインターフェースの技術と考えられていたが、HTML/ブラウザ技術の進化によって、放送サービス提供に関わる主要技術になりつつある。
放送と通信の融合が提唱されて久しいが、放送サービスにおける通信系技術の活用が普及段階に入っており、対応技術者の養成が喫緊の課題と考える。
日本ケーブルラボではケーブル事業者のためのHTML5ガイドラインの策定を進めており、事業者の方々に活用していただけるものにして行きたいと考えている。

(本内容は、『ケーブル新時代』(発行:NHKエンタープライズ)2015年1・2月合併号に掲載されたものです。)