UHD Alliance
今、日本国内においては4K放送の試験放送や4KコンテンツのVOD配信が開始され、4K対応テレビの販売も順調だと聞く。日本ケーブルラボにおいても4K対応のための関連運用仕様の策定・更新を進めており、機器の製品化や事業者による本格的サービスが期待されるところである。
米国においても超高精細映像への期待は高まっており、今年の米国のConsumer Electronics Show(CES2015)において「UHD Alliance」の設立がアナウンスされた。
詳細についてはこれからになるが、設立発表やインターネット上の報道記事等によると、UHD Allianceは4K以上の超高精細(Ultra High Definition)映像コンテンツを利用者に提供する(届ける)ため、作品の製作から配給、機器メーカーがタッグを組むもので、米国における4K(UHD)の本格普及の動きがうかがえる。

HDR、広色域
そのUHD Allianceでも取りざたされている超高精細映像に関わる技術キーワードとして4K高解像度以外に「HDR」や「広色域」、「3Dオーディオ」が挙げられている。
「HDR」はハイダイナミックレンジ(High Dynamic Range)の略語で(録画機器としてのHard Disk Recorderではなく)、映像コンテンツの明暗を可能な限り広く再現させる技術で、視覚的な表現力を高めようとするものである。
これまでの映像再現においては露出を明るい部分に合わせるか、暗い部分に合わせるかの調整を行っていたが、この明暗に対するコントラスト調整を複合的に掛け合わせることで、人間の目による動的な露出調整と同等の映像再現が可能となり、より鮮明な映像再現を可能にする。
また、「広色域」はこれまでのハイビジョン放送での色の再現範囲を更に拡張することで、より自然的な色彩を再現しようとするものである。
これまではBT.709という国際(ITU-R)規格に則った色域の範囲内で色彩表現が行われていたが、「BT.2020」という更に広い色域規格に対応することで、より自然的な色彩を再現しようとするものである。
「3Dオーディオ」はその名の通り、3次元的(立体的)な音の方向や距離、拡がりなどを再生する方式のことであり、より自然な臨場感を醸し出そうとするものである。

このように4K/8K解像度に加え、HDR、広色域さらには音声品質に対しても現行の映像品質を超える仕様への対応を推進させることで、より高品位な映像・音声コンテンツを再現させるものである。

国際動向と国内の動き
冒頭の説明の通り、米国ではUHD Allianceが立ち上がり、業界横断的な連携が行われようとしている。
米国には米国の映画スタジオの技術標準化団体であるMovielabsがあり、ハリウッド作品の違法コピーを防ぐためのセキュリティ関連の仕様や映像品質に関わる共通仕様を定めてきた。
Movielabsは映画業界の標準化団体であり、UHD Allianceは業界間の連携を推進する団体なので、それぞれに目的は異なるが、提唱している技術仕様に被る内容もあり、今後の動きは気になるところである。
UHD Allianceには日本のメーカーもリストに名を連ねているが、UHD Allianceの国際的影響力や日本国内の動きについては未だつかめていない。

日本における放送関連の技術標準化はARIBを中心に進められているが、引き続きハリウッドコンテンツを有する米国の動向も注意深くウオッチしていきたい。

(本内容は、『ケーブル新時代』(発行:NHKエンタープライズ)2015年4月号に掲載されたものです。)