ここ数年のIoT(Internet of Things、「モノ」のインターネット、従来のIT関連機器以外の機器類をネットワーク接続し、多様なサービスを可能とする)の進展により、IPネットワークを活用したサービスが増えてきた。
中でも宅内ネットワークを利用したサービスとしては、ホームエネルギーマネジメント、ヘルスケアサービス、ホームモニタリング&セキュリティサービス等々が挙げられる。
また、以前紹介した「DLNA CVP-2(現在は、DLNA Vidipathに名称変更)」や「ネットワークDVR」のように、商用・録画コンテンツを宅外のネットワーク(クラウド)上から宅内ネットワーク内の視聴端末等に配信するサービスも欧米では普及しつつある。
今後、腕時計や眼鏡等の身に着けるデバイス(ウェアラブルデバイス)を利用したサービスも出てくると予想される。

これらの宅内ネットワークを活用したサービスの促進要因として、IoT技術の発展に代表されるWi-Fiによる無線化やスマホ/タブレット等のデバイスの普及が挙げられるが、目に見えない接続形態に対する接続性や、セキュリティ面での課題等もあらわになってきた。

宅内ネットワークへのサポート強化

従来のインターネット接続サービスにおいては、加入者宅に設置するモデムまでの設備および回線疎通についてはサービス提供事業者の責任で、モデムから先の宅内ネットワークについては利用者責任にて環境構築・サービス提供(利用)が行なわれてきた。
宅内ネットワークを利用したサービスとしては、PCやスマホ/タブレット、ゲーム機器のインターネット接続、およびDLNA対応のSTBやハードディスクレコーダーと視聴端末を組み合わせた宅内での録画コンテンツ視聴が主流であったと考える。

前述の通り、これまでは宅内のネットワーク環境については利用者責任にて準備・対応されることが前提であったが、様々な接続形態を利用者のみで対応するには難しくなりつつある。
その状況下で地域密着の強みを生かしたケーブル事業者によるサポート力が求められると同時に、新たなビジネスチャンスを生み出している。
既に一部の事業者においては、これまでの責任分界点を超えたサポートサービスを提供し、成果を上げていると聞く。

日本ケーブルラボにおいても宅内ネットワークの高速化や運用課題対策について、技術調査や対策検討を進めている。今年の6月に策定したJLabs DOC-028「ネットワーク速度・帯域管理ガイドライン」においても、IPネットワークサービスにおける運用課題について取り上げ、複数事業者の取組みを紹介させていただいた。
米国ケーブルラボの活動においても、仮想化技術を応用した宅内機器の簡素化や、今後の宅内ネットワークの広がりに対応するため、宅内ネットワークのIPv6化および複数台のルーター装置を接続した際の複雑な経路情報管理を簡素化する運用技術の検討も進んでいる。

日本ケーブルラボにおいても引き続き、宅内ネットワーク技術に対する調査や運用課題に対する取り組みを行ない、事業者の方々に発信していきたいと考えている。
事業者の方々におかれても、ラボのホームページや技術セミナー等を介して各種情報を入手していただくとともに、新たな要望や課題情報等をお知らせいただければ幸いである。

(本内容は、『ケーブル新時代』(発行:NHKエンタープライズ)2015年8・9月号に掲載されたものです。)