昨年、日本ケーブルラボでは、ケーブル事業者における運用技術に関わる課題解決に着目し、運用技術ワーキンググループを立ち上げた。
平成25年度の検討テーマとして「ケーブルネットワーク(設備・サービス)の強靭化」を取り上げ、事業者からのWGメンバーとともにケーブル事業者における設備運用における課題や対策について検討を行った。
その成果として「ケーブル運用保守ガイドライン」と「ケーブル運用情報共有システム基本機能要件書」を策定し、ラボ会員と共有するだけでなく、業界全体の運用品質の向上が図れるよう、日本ケーブルテレビ連盟などとも共有し、運用品質向上のための提言を行ってきた。

「ケーブル運用技術ガイドライン」
「ケーブル運用保守ガイドライン」は業界としての運用基準を定めるものではなく、日々の運用や運用対策の在り方について思案されている事業者に対して指針となる情報を提供することを目的としている。
事業者においては個人的なつながりや機器ベンダー、地域事業者間交流を通して、運用ノウハウに関わる情報入手などを行っているところもあると考えるが、日々の運用課題としてノウハウ情報の乏しさに悩まれている事業者意見もあり、WGメンバーでの取り組み内容などをもとに設備監視の方策や強靭化に向けた施策等をまとめたものである。
ガイドラインの主な内容としては、設備やサービスの監視、および強靭化施策を中心に技術運用に関わる事業者の取組みについてまとめており、事業者によっては既知・対応済みの内容もあるかも知れないが、一度、目を通していただき、自社の運用方法の振り返りや参考情報として活用していただければと考える。

「ケーブル運用情報共有システム」
「ケーブル運用保守ガイドライン」は、ガイドライン策定時点でのWGメンバー事業者での取り組み内容をもとにまとめたものであり、未来の障害や課題には対応していない。また、多くの事業者と共有できるよう、個々の設備や事業者環境に応じた具体的な閾値や適用方法についてまでは言及していない。
そのため、「ケーブル運用保守ガイドライン」をベースとして、個々の障害や運用課題に関する施策情報をタイムリーに情報共有を図る仕組みとして「ケーブル運用情報共有システム」を構築し、本システムを介して事業者間でのノウハウ情報をタイムリーに、より詳細に共有していくことを提案した。
本システムでは、各事業者で発生した障害や運用課題について、その内容と対策をデータベース化し、ほかの事業者が障害や課題に遭遇した際に参照していただき、その解決に利用していただくことを目的としている。
ケーブルラボでは業界全体のシステムとなるよう日本ケーブルテレビ連盟の協力を得て、本情報共有システムのプロトタイプ版を構築し、トライアル運用を開始した。

大掛かりのシステムではないが、利用者の方が情報を提供しやすく、また、情報の更新や利用者間の質疑応答を行いやすくする機能を盛り込んだ。
器ができても、中身(情報)が無かったり、必要とする情報が探し当てにくいシステムでは意味を成さないので、いかに利用者の方に多くの情報を提供してもらえるか、提供された情報を分かりやすくしたり、最新の情報を提供するための改修や働きかけを行いながら、事業者の方々にとってサービス品質や運用効率の向上に役に立つシステムにしていきたい。

(本内容は、『ケーブル新時代』(発行:NHKエンタープライズ)2014年5月号に掲載されたものです。)