ビッグデータ。この言葉を新聞・雑誌記事やニュースサイト上で見聞きした方も多いであろう。一言で言えば、大量のデータを分析し、要因調査や将来予測を行うことである。
これまでも大量データを基にした分析処理はコンピュータシステムの歴史と共に行われており、身近なところではスーパーやコンビニ等での販売データ等を分析し、商品開発や仕入・商品配置、広告等への活用事例が挙げられる。
ビッグデータの前は「データウェアハウス(DataWarehouse/DWH)」という言葉で同様のソリューションが謳われていたが、ビッグデータとの違いとしては、DWHは主に構造化データ(売上・販売データのように目的別ごとに編成されたデータ)を対象とし、ビッグデータは構造化データ以外にも、イメージやセンサーデータ等の非構造化データも含めた多種多様なデータおよびそれを分析することを表している。

ビッグデータが広く普及しつつある理由としては、ICT技術の発達によるデータ収集・処理プラットフォームコストの低下、また、データ分析技術の向上等も挙げられるが、その背景要因として多種多様なサービスが混在してきた中で、常に顧客ニーズをとらえ、タイムリーにサービス提供していくことが求められる時代となってきたことがある。

ケーブル業界でのビッグデータの利用に向けて
ケーブル業界におけるビッグデータの活用例としては、サービス品質の向上、加入・利用促進、解約防止等の既存サービス・顧客向けの対応だけでなく、ターゲット広告やデータの二次利用等での社会(地域)貢献や、更なる収益向上にも活用できる。また、分析結果を基にしたリソースの運用効率向上でコスト削減も期待できる。

そのビッグデータの情報源としては、各種既存システム・設備のデータや作動ログ、監視・測定値等に加えて、新たなセンサー機器の利用や気象情報やツイッター等のSNSなどの外部データが挙げられる。
これらの多種多様なデータを基に並列分散処理技術やインメモリ分散キャッシュ、複合イベント処理と言った技術を利用したビッグデータ分析プラットフォームを用いて、また、データ/テキストマイニング、機会学習といった大量データの分析技術を活用して、データ分析を行っていく。
一見、難しそうでコストも掛かりそうな仕組みではあるが、分析プラットフォームの構築・利用やデータ分析作業には、そのプラットフォーム提供、分析支援を行うソリューション事業者も出てきており、敷居は下がりつつあると考える。

しかしながら、素となるデータは、提供サービス、設備、利用者、地域・環境等によって変化し、また、事業者としてどのような目的に対してビッグデータを利活用するかによって、そのアプローチも異なるため、全てにおいて共通化できるものではなく、事業者においても継続的なデータの取集と蓄積、個人情報取り扱いポリシーの明確化、データのモデリング手法の確立、ビッグデータに関わる人材育成、費用対効果の妥当性の検証等の課題に対して、継続的に検討・対応を行っていくことが求められる。

ケーブルラボでは、昨年8月にビッグデータ検討タスクフォースを発足させ、ケーブル業界でのビッグデータの活用について調査・検討を行い、報告書をまとめさせていただいた。

是非、一読いただき、ケーブル業界でのビッグデータの在り方と自社での活用検討について考える機会を持っていただければ幸いである。

(本内容は、『ケーブル新時代』(発行:NHKエンタープライズ)2014年8・9月合併号に掲載されたものです。)