2015年5月号の「ラボ活動トピックス」にて「IPv6対応ケーブルインターネットアクセス技術仕様ガイドラインJLabs DOC-009 2.1版」の改定を行った旨を紹介したが、今号でも改めて、日本ケーブルラボでのIPv6対応に関する活動についてとケーブル事業者におけるIPv6対応状況について述べてみたい。
日本ケーブルラボではケーブル事業者におけるIPv4枯渇/IPv6化対応を支援するため、事業者向けのガイドライン策定やセミナー開催等を行っている。
昨年は先のガイドライン改定作業と並行して、11月に事業者向けセミナーを開催し、先行事業者の経験を基にしたIPv6対応のノウハウの共有に努めさせていただいた。
今回のガイドラインの改定は、手前味噌となって恐縮だが、2.0版での改定した内容の完成度が高かったため、大きな修正を必要とせず、実情に合わせた用語修正とケーブル事業者におけるFTTH運用の多様化面の反映および先行事業者の導入事例を充実させていただく内容となった。この場を借りて、今回の改定にご協力いただいた執筆メンバーに加えて2.0版の改定メンバーにも改めてお礼を申し上げたい。

ケーブル業界でのIPv6普及

さて、ケーブル事業者におけるIPv6化の状況であるが、中・大規模事業者でのサービス提供および対応準備が進んでいるようであるが、中小事業者においてはまだこれからといった事業者が多いようである。
IPv6の普及が進まない要因としては、利用者向けインターネットサービスが未だIPv4アドレス基調で、IPv6アドレスでないと利用できないサービスがほとんどないことから、事業者としても加入者拡大等、収益向上の投資効果が見いだせないために、IPv6化投資に消極的な事業者が多いのではないかと考える。また、小規模事業者においてはそのユーザ数からNAT装置を利用することでIPv4アドレスの延命が図れるのではないかと考えている事業者も多いと考える。

しかしながら、近年、これまでのインターネットサービスや双方向STBに加え、スマホ、タブレットやスマートホームサービスといった新しい機器やセンサーを利用したサービスが市場に出始めており、これらの端末・機器間の通信にIPプロトコルが利用される等、IPアドレスの需要はこれからも増えていくものと思われる。
3月号で紹介した電気・ガス等のデジタル計量器であるスマートメーターにおいても、IPv6が採用されている。また、携帯網のIPv6化も進みつつある。

IPv6化検討の勧め

現在のIPv6サービスの普及状態からIPv6化の検討、対応は未だ早いと考えている事業者もおられると考えるが、先行事業者の例にある通り、IPv6化のための直接投資をできるだけ抑えつつ、将来的な対応に備えるため、設備更新のタイミングでIPv6対応の機器を導入し、準備が整った段階でサービス提供を開始するというのはリーズナブルな考え方ではないだろうか?
本記事がIPv6化検討のきっかけになれば幸いである。

冒頭にて紹介した「IPv6対応ケーブルインターネットアクセス技術仕様ガイドラインJLabs DOC-009 2.1版」以外にもIPv6普及・高度化推進協議会やIPv4枯渇タスクフォースのサイト等でもIPv6化のガイドラインや各種情報が公開されているので、これから対応・検討を進める事業者のお役に立つのではないかと考える。

(本内容は、『ケーブル新時代』(発行:NHKエンタープライズ)2015年7月号に掲載されたものです。)