2016年9月26日から29日まで、米国ペンシルバニア州フィラデルフィアにてSCTE(ケーブル技術者協会:Society of Cable Telecommunication Engineers)が主催する「Cable-Tec Expo 2016」が開催されました。ラボからは3名が参加し、技術調査を行いました。
展示会には約380社が参加し、最新のケーブル関連機器・ソリューションが展示されていました。また、期間中は並行して次世代映像サービス、超高速ネットワーク(HFCおよびFTTH)、仮想化、エネルギー管理(Energy 2020)などをテーマに、約40のワークショップが開催されました。
今年のテーマは、ケーブル事業の収益拡大、運用合理化、顧客満足向上のための技術・製品・サービスの革新を意味する“Innovation Meets Here”です。展示会を概観すると、RF(QAM)による放送関連の新技術展示がほぼ無くなる一方で、DOCSISネットワーク仮想化およびIP STBに代表される通信技術ならびにオールIPマイグレーションについての進展を反映した内容となっていました。
海外MSOにおいては合併や業務提携が進んだことにより、Comcast X1プラットフォームの外販やRDK・RDK-Bでの連携拡大など、ダイナミックな動きが見られました。また、VR/ARによる高画質な映像伝送には伝送路の帯域拡張・高速化が必要になることを見越したFull Duplex DOCSISの開発や米国における本格的なFTTH導入についても進展が見られました。
【展示概要】
●Nokia
Gainspeed社を買収
All IP化に向けたDOCSIS3.1とPONをサポートするvCCAPを発表し、Arris、Cisco、HUAWEIに対抗
ケーブルネットワークにおける仮想化が、いよいよ実用化の様相
●HUAWEI
HFCにおいて周波数を3GHzまで拡大し、25Gbpsを実現する独自DOCSISのプロトタイプ製品をアピール
既に商用化されているC-DOCSIS製品も展示
●Arris
DOCSIS 3.1とPONの両方に対応するリモートCCAPを初展示
●TTI(台湾)
Androidベースの4K IP-STB、これにDVB-T2とDVB-C両チューナを搭載した4K IP・RFハイブリッドSTBを展示
●Juniper Networks
Programmable Siliconと称して、SDN(ソフトウエアによるネットワーク仮想化)用Router/SwitchのASIC(特定用途向け集積回路)を展示
ケーブル仮想化へのマーケットを強く意識
●Kyrio(CableLabsの子会社)
機器テストの一環として、iPhone 6sとGalaxy S7のWi-Fi(802.11n)特性を比較して公表
【ワークショップ概要】
●Immersive Video
VR/ARの時代にどのように大容量の高精細画像を伝送するのか、検討の初期段階におけるアイデアを各社が説明
●Advanced Encoding Meets IP Video Delivery
IPビデオフォーマットが多様化していくことへの対応について、単にエンコーダを導入するだけではなく、ビッグデータ解析を利用し、IP配信の負荷パターンを事前に予測して回線効率を高めるC-ABRやM-ABRの手法を紹介
●SDN/NFV
SDN/NFVのユースケースが紹介され、CPEの仮想化、vCCAPなどで、センター系、幹線系ともに、着実に実用化に向かっていることが示された。vCCAPはケーブル独自の分野であり、普及には業界の努力が必要との主張も行われていた。VMはチューニング次第でかなり性能が変化し、この点は要注意との報告がなされ、節電の観点からも注目を集めていた。
●Hybrid Home Networks for Gigabit
ギガビット時代を意識し、有線と無線のハイブリッドホームネットワークの構築と高速化技法について紹介
●The Internet Of Things
IoTが本格化した時、ケーブルネットワークがどのようにあるべきかを検討
●Energy Management(Energy 2020)
米国における注目度の高い分野であり、展示エリアには専用コーナーが設けられている。環境面はもとより経営面でも節電は大いに必要であるとの認識から、SCTEは専門委員会を置いて詳細な検討を行っている。
●Early DOCSIS 3.1 Deployments
DOCSIS 3.1の導入状況、変調方式の特徴、フィールドテスト実施概要について説明
展示会場風景