日本ケーブルラボは2025年11月18日(火)、品川プリンスホテルにて、技術セミナー、AIパネルディスカッション、国際セミナー、特別講演、情報交換会の5部構成によるラボ オータムセミナー2025を開催しました。
国際セミナーについては、総務省、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟、および一般社団法人日本CATV技術協会より後援をいただきました。
- 日時・場所
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2025年11月18日(火)10:00~19:00
会場(品川プリンス メインタワー)およびZoomWebinarライブ配信によるハイブリッド開催
- 参加者数
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- 技術セミナー 192名
- AIパネルディスカッション 197名
- 国際セミナー 97名
- 特別講演 142名
- 情報交換会 90名
- プログラム
- 当日の講演動画(国際セミナーは除く)はこちらに公開しています。会員ログインの上、ご覧ください。
【10:00-12:00】技術セミナー 「IPと光が拓く、次世代ケーブルインフラとサービス変革」
- 「放送のIP化とサービス変革」 日本ケーブルラボ 事業調査部
- 放送のIP化が国内外で加速する中、日本ケーブルラボでは、ケーブルテレビ事業者が検討すべき7つの選択肢と4つのIP化方式を整理しました。今年度は、収益向上に資する技術(タイムシフト、クラウド録画、広告挿入など)の検討を重点課題とし、年末に報告を取りまとめる予定であること、また、IBC 2025の調査では、AIがIP配信機能に浸透し、運用効率化が一層進むトレンドを確認したこと、加えて、コミュニティチャンネルのアーカイブにAI分析(セマンティックサーチ)を適用し、二次利用の基盤となる実証デモを実施したことを報告しました。
- 「超高速・高信頼光インフラへの進化」 日本ケーブルラボ 技術部
- ブロードバンドサービスに不可欠なFTTHインフラの超高速・高信頼化に関する取り組みについて報告しました。国内ケーブルテレビ事業者の約7割が採用するEPONにおいて、マルチベンダ相互接続実現するための新仕様書SPEC-046(1.0版)を、2025年11月に発行予定であること、また、オープンソースのSVGmapを活用したケーブルGISプロジェクトを紹介し、災害に強い高信頼インフラの実現を目指す取り組みを説明しました。
- 「新技術による社会課題解決」 日本ケーブルラボ 事業調査部
- 単身高齢者の住居確保という社会課題に対し、Wi-Fiセンシングの活用を提案しました。この技術はカメラ使用しないためプライバシーに配慮でき、さらに既存Wi-Fi環境を活用可能であることから、見守りやセキュリティへのサービス展開が期待されます。また、総務省の地域DX推進事業への参画事例として、三重県いなべ市におけるWi-Fi 7/HaLowとEdge AIを活用した害獣検知・撃退システムの実証を紹介しました。特に、長距離高速通信が可能なWi-Fi HaLowは、新たなビジネス機会の創出に繋がる可能性を示しました。
【13:00-14:15】AIパネルディスカッション 「地域×AI」 ~ケーブル飛躍 業界AI始動開始~
- 「AI特別委員会報告」
- ① 委員会の設置背景・目的等 日本ケーブルラボAI特別委員長
ラボの重要施策として、従来の「オールIP」を「AI+オールIP」へ発展させるため、本委員会を7月に設置しました。AIは爆発的に進化し、事業存続を左右する要素であることから「静観は退化である」との認識の下、AI前提社会に備え、ケーブル事業者が飛躍的な成長を遂げ、地域に不可欠な存在となることを目的としています。業界のAI実装は本格化しておらず、技術の目利き力が必要であると説明しました。
- ② 委員会の活動詳細状況 日本ケーブルラボ AI特別委員会事務局
委員会は、実働部隊として業界の知見を集約する「CAI(Collective AI Initiative/CableAI)」を編成し、5つのタスクチームで構成されております。活動実績として、連盟と共同での事業者アンケートの実施などが挙げられます。AI本格実装の鍵となる基盤整備を優先し、業務効率化を通じて新規事業へリソースをシフトする全体施策を整理し、年度内の施策発表に向けて検討を本格化させていることを紹介しました。
- AIパネルセッション
- 外部の有識者3名による発表ののち、ラボ宇佐見専務理事を交えてパネルディスカッションが行われました。
- ① AI対人対話のライブデモ Hmcomm株式会社
近鉄ケーブルテレビのFAQを学習させたAIオペレーターのライブデモが披露されました。このAIは、スムーズな割り込み応答、低遅延での回答、正確な感情分析といった特長を備えています。また、関係ない質問には応答しないガードレール機能により、誤情報(ハルシネーション)のリスクを回避できる点が強調されました。さらにAIオペレーターは商用段階にあり、一部業務から段階的な導入が進められる見通しであることが紹介されました。
- ② データ共有不要のAI学習技術 KDDI株式会社
機密性の高い生データを共有することなく共通モデルを構築する「連合学習」の技術が紹介されました。これは、学習済みAIモデルのパラメーターのみを共有し、標準モデルの精度を向上させる仕組みです。また、個人情報保護を遵守しながら企業間でデータを活用できる「データクリーンルーム」の構想も示されました。生成AI分野での実用化には時間を要するものの、カスタマーサービス等への適用が期待されることが説明されました。
- ③ 最新技術進化 株式会社Insight Edge
AI技術の進化の方向性について紹介されました。AI性能を支える「密度の法則」に基づき、数年後には高性能AIが一般PC上で動作するなど、モデルの小型化が進む可能性が示されました。また、遅延や安全性の観点から、AI機能のエッジ化(HAI)の流れは不可逆的であり、光インフラ等の既存資産を有するケーブル事業者は、地域AIデータセンターの実現に向け極めて有利な立ち位置にあることが説明されました。
- ④ AI特別セッション 各登壇者・日本ケーブルラボ宇佐見専務理事
本セッションでは、AIオペレーター導入は段階的に進めるべきであること、またAI活用の前提となるデータガバナンスおよびデータ準備の重要性が確認されました。併せて、業界におけるAI推進においては人材育成が最も重要であると強調されました。ラボは、AI技術を試行・評価するための「AI試用・試作人材育成プラットフォーム」の構築を進めており、来年4月の稼働開始を目指して、業界関係者に積極的な参画を呼びかけました。
【15:00-16:30】国際セミナー
- 「North American Broadband Industry Update」 米国CableLabs Jeff Chen様
- CableLabsのJeff Chen様(Executive Vice President and Chief Relationship Officer)より、北米ブロードバンド業界の最新動向が報告されました。米国ブロードバンド市場では、固定無線アクセス(FWA)が加入者増を牽引する一方、ケーブル業界は加入者純減が続く厳しい競争環境にあることが説明されました。この状況を受けて業界再編のM&Aが活発化しており、CoxとCharterの合併や、モバイル通信事業者による光ファイバー網取得の動きが進んでいることが説明されました。また、ケーブルオペレーターは、DOCSIS 4.0へのネットワークアップグレードによる信頼性・容量の向上や、モバイルサービス提供による固定・モバイル融合戦略を推進し、顧客体験の改善を通じて競争力の回復を図っている状況がご説明されました。
- 「AI Empowered Smart Networks and Adaptive Services」 米国CableLabs Paul Fonte様
- CableLabsのPaul Fonte様(Director of Future Infrastructure Group)からは、AI技術を活用したスマートネットワークおよび適応型サービスに関する取り組みが紹介されました。通信業界ではAI導入が進展し、収益増加(84%)やコスト削減(77%)に寄与している一方、データの断片化や共通標準の不足、信頼性確保など、実運用上の課題が依然として存在していることが説明されました。また、CableLabsは、業界の技術仕様を構造化し、生成AIの精度向上を図る「ドメイン専門知識レイヤー」を構築したこと、さらに、タスクを自律的に分解・実行するAgentic AI(フィールド技術者向け診断アプリなど)の実証を進めていることが説明されました。将来的には、HFCや光ファイバーを含む多様なアクセス技術に対応し、ネットワーク全体を自己管理・自己最適化へ導くEmbodied AIの実現を目指していることが、説明されました。
【16:40-17:10】特別講演
CATVの未来成長戦略 ~AI・モバイル・宇宙からの示唆~ Fifth Wave Initiative代表 渡邉文夫様
Fifth Wave Initiative代表 渡邉文夫様より、「CATVの未来成長戦略 〜AI・モバイル・宇宙からの示唆〜」と題し、講演いただきました。この中で、加入者数の減少や収益性の劣化が進むケーブルテレビ業界の現状に対し、AI・モバイル・宇宙といった外部の潮流を味方につけることこそがケーブルテレビ再発明の鍵であると提言されました。その鍵となる戦略として、地域連携とID連携を核とした「地域のExperience Provider」への進化が強調されました。地域に根差した多様な活動(産業、医療、防災、教育、観光、行政など)との連携を深め、AIを必須として活用することで、全国均一サービスでは拾えない多様なニーズを持つロングテール市場での価値創造を目指すことが、顧客満足(CS)から顧客幸福(CH)を実現する道筋であると示されました。
【17:30-19:00】情報交換会
セミナーにご参加いただいた業界関係者との交流の場として情報交換会を実施いたしました。また、同会場にて、2025年度前期JQE資格検定試験合格者へのJQE(JLabs Qualified Engineer)資格※認定証の授与式を行いました。
* JQE(JLabs Qualified Engineer)資格についてはこちらをご覧ください。

技術セミナー講演風景

AIパネルセッション風景

国際セミナー(Jeff Chen 様)

国際セミナー(Paul Fonte様)

国際セミナー会場風景

特別講演(渡邉文夫様 ビデオ出演)