一般社団法人 日本ケーブルラボは2025年10月3日、「第4回 倶楽部JQE Advanced セミナー」を東海地区(名古屋市)で初開催した。本セミナーは、JQE(日本ケーブルラボ認定資格)有資格者の交流と議論の場として企画されており、グループ討議と、講演の二部構成で行われた。
現場の課題と未来の道筋
当日のセミナーのグループ討議では、現場のエンジニアたちが「集合住宅高速化(FTTx)」と「放送のIP化」という、ケーブル業界が避けて通れない重要課題について深く議論された。特に、集合住宅の光化における技術的な困難さよりも、住民との合意形成や景観上の課題が最大の焦点となった。
事務局は、宇佐見専務理事の講演も含め、今回のセミナーを通じて、光の直接導入と放送のIP化は、ケーブル業界にとって「だんだん見えてきた道筋」であり、避けて通れない課題であると総括している。参加者からは、宇佐見専務理事の講演に対して「海底ケーブルの題材を用いて、専務の経験談や技術者としての取り組み姿勢について語られ」たことで、「とても勉強になった」との声が寄せられた。

グループ討議風景:テーマ 「集合住宅高速化(FTTH関連)」と「放送のIP化(顧客サービス関連)」
160Gbps太平洋横断システム開発者が語る タイトルは「光海底ケーブル開発の秘話(裏話)」。
宇佐見専務理事は、1983年にKDD(国際電信電話)に入社して以来、光通信用デバイスの研究から始まり、1995年には160Gbps太平洋海底ケーブルシステムの開発に携わり、KDDI研究所の執行役員やKDDI理事 技術開発本部長(5G、AI、IoT先行開発を指揮)を経て、現在日本ケーブルラボの専務理事を務めている。
この経験に基づき、宇佐見専務理事は「長距離光海底ケーブル通信システムの研究開発経験」 や「海底ケーブル100年 -同軸から光ファイバへ-」の歴史、そして最新の状況について深く語った。
講演では、初期の光再生中継から、光増幅・波長多重システム、さらには最新のディジタルコヒーレント技術や多芯化・空間多重システムへの進化 が紹介された。例えば、1.55 µm 帯単一波長半導体レーザを用いたTPC-4システム(ビットレート560 Mb/s、中継間隔138 km)の開発事例などが示され、技術の進化の具体例が共有された。
技術者への熱いメッセージ:「6桁」の進化が世の中を変える
講演を通じて、宇佐見専務理事がJQE資格者に向けて送ったメッセージは、特に力強いものだった。
この中で、光海底ケーブルが100年にわたりグローバルネットワークの主役であり続けていると強調した。そして、技術者としての姿勢について、メディアの関心や社内、経営者の評価が変化したとしても、「なるべく気にすることなく、自ら信じることを継続すべき」だと訴えた。
その信念を裏付けるのが、「圧倒的な技術の進化(伝送容量が6桁向上)が、世の中を変える」という洞察。技術が実現すれば、やがて世の中から必要とされ、当たり前のものになっていく、と論じた。
また、講演では、現在、米国の巨大IT企業(グーグル、メタ(FB))が海底ケーブルへの出資を拡大し、世界のデータ伝送量の大部分を支配しつつある状況が指摘された。こうした背景を踏まえ、宇佐見氏は、国内通信キャリアのにならずケーブルテレビ事業者の役割がより重要になっていると総括し、参加者に技術革新への意欲を促した。

講演風景(日本ケーブルラボ専務理事 宇佐見正士):タイトル「光海底ケーブル開発の秘話(裏話)」
日本ケーブルラボは、今後も事業者からの要望に応えるため、地域の実情に合った最適なアプローチを見つけるためのノウハウの調査・展開を行っていく。
*JQE資格は、一般社団法人日本ケーブルラボ (JLabs) が認定する民間資格(JLabs Qualified Engineer)です。ケーブルサービスを支える技術や革新技術に関する基本的知識を修得し、事業環境に適したシステム設計やサービス企画ができる技術者・サービス企画担当者の育成を目的としています。



