2012年8月15日(水)、16日(木)の米国ウォールストリートジャーナル紙(WSJ紙)に、「アップルが米国の最大手MSOの1社とアップル社製セットトップボックス(STB)使用を交渉中」との記事が掲載され、日本のケーブル業界でも話題になっています。
このSTBはテレビ番組の同時再送信及びオンデマンドコンテンツ配信に対応し、iPad/iPhone等のアップル社製機器とも連携して、Anytime/Anywhere(いつでも、どこでも)のサービスを実現できるものとして開発中との事ですが、どの大手MSOもアップル自身もWSJ紙の記事について肯定しておらず、事実関係は確認できていません。
一方でGoogleは先月、自社のFTTHネットワーク上で、放送と上り・下り1GbpsのインターネットをパッケージにしてUS$120/月のサービスをカンザスシティで開始し、徐々にサービスエリアを広げて行くと発表しました。
上記、WSJ紙の記事が事実とすれば、アップルはケーブルMSOと提携し、居間のSTBを抑えることにより、iPad/iPhoneのフットプリントの拡大を目指す方針と思われ、一方、Googleは自らFTTH事業者となってケーブル・衛星事業者と対抗して顧客基盤を奪う戦略とみられます。
米国ではケーブルMSOが顧客及びコンテンツに強固な基盤を築いている事から、Googleの戦略が成功するかどうかについては、疑問視する意見も多く出ているようですが、やはり顧客サービスの拠点としての居間のSTBの支配権の争奪戦が、ケーブル・衛星・通信事業者にアップル・Googleを加えて激化して来ている状況であることは間違いありません。
これに対し、米国のMSOは大手5社が連携して“ケーブルWi-Fi”のブランドでWi-Fiネットワークを全国展開し、TV Everywhereの展開をサポートする等の戦略を実施し対抗しています。
現在、日本のケーブル業界では通信事業者のFTTHサービスとの競合が最大の問題となっていますが、競合に勝ち残るためには、FTTHかHFCかという観点のみならず、STBを核として更に魅力あるケーブルサービスを展開するために、機器メーカー、コンテンツプロバイダー、ISP、ソフトベンダー等関連業界との連携をいかに構築し、家庭の居間の支配権を死守、拡大させるかという広い視野での検討が肝要であると考えます。